なとーんどー三線
- 喜盛 新垣
- 2025年10月25日
- 読了時間: 6分
「なとーんどー三線」の革新性!
調弦の悩みと本皮の不安を解消する技術

導入:三線の「不便さ」を過去にする革新とは?
沖縄の心臓ともいえる伝統楽器、三線。その美しい音色に魅了され、手に取ったものの、「調弦(チンダミ)が難しい」「本皮がすぐ破れる」といった課題に直面し、挫折した経験はありませんか?
著名な三線職人である新垣喜盛氏(池武当新垣三線店 創業者)は、既存の三線が抱えるこれらの「不」(不便さ)により、「三線を演奏する人が減ってしまう」という強い危機感を抱いていました。
この課題を根本的に解決し、三線をより身近なものにするために開発されたのが、**「なとーんどー三線」**です。
「なとーんどー」は、沖縄方言で「(音が)鳴っているよ」「出来ているよ」という二重の意味を持ち、英語表記の「NA-TONE-DO」には「TONE(ねいろ)」と「DO(成し遂げる)」というコンセプトが込められています。
この商標登録された革新的な三線が、どのように演奏者の悩みを解消し、三線文化の未来を築いているのかを探ります。
1. なとーんどー三線が解決した伝統的な三線の課題(「不」の改善)
新垣氏が「なとーんどー三線」の開発で最も改善を目指したのは、演奏者が直面する以下の実用的な課題でした。
1-1. 初心者を悩ませる「調弦の困難さ」
従来の三線に用いられるカラクイ(糸巻き)は、調弦(チンダミ)に時間がかかり、特に初心者にとって高い参入障壁となっていました。これが原因で、三線への情熱が冷めてしまうケースも少なくありませんでした。
1-2. 環境に左右される「本皮の脆さ」
伝統的な本皮(ニシキヘビの皮)を張った三線は、柔らかな音質を持つ一方で、湿気や水分に非常に弱く、天候に影響されやすいという欠点がありました。さらに、演奏しないと半年以内に破損することもあり、頻繁な張替えが必要でした。
1-3. 音質の不安定さと汎用性の限界
棹と胴の結合部である部あて(ぶあて)が緩むことで、音質や演奏に悪い影響が出ることがありました。また、従来の三線は本皮の張り具合で高音か低音かが決まるため、異なる音域を演奏するために複数の三線を所有する必要がありました。
2. 「なとーんどー三線」4つの革新ポイント
これらの課題に対し、「なとーんどー三線」は、ユーザー体験全体を向上させるために以下の画期的な機能を標準装備または特注で提供しています。
2-1. 約1分で完了!「ゆるまないカラクイ」を標準装備
なとーんどー三線には、調弦の難しさを解消する**「ゆるまないカラクイ」**が標準装備されています。
この機能により、演奏者は指2本でカラクイを止めたい位置に簡単に固定でき、初心者でも約1分という短時間で調弦を完了することが可能です。
これにより、煩わしい準備時間を大幅に短縮し、演奏に集中できるようになりました。
2-2. 水を吹きかけても平気!本皮の「特殊コーティング」
本皮の持つ本物のねいろを保ちつつ、耐久性を飛躍的に向上させるのが本皮の特殊コーティングです。
この特殊なコーティング剤は、湿気や水に弱い本皮に施されることで、驚異的な耐水性と耐湿性を実現しました。資料によれば、直接水を吹きかけたり、アイロンを当てたりしても音質が変化しないほどであり、環境に左右されず、安定した音質での演奏を可能にします。
2-3. 半永久的にガタつかない「部あて」
棹と胴(ティーガ)の結合部である部あてには特殊な技術が施され、半永久的にガタつきが生じないように仕上げられています。
これにより、音質や演奏の安定性がサポートされ、長期的な品質維持が保証されます。
2-4. 1丁で高音~低音まで出せる「音質可変機能」(特注)
特注品(別途25,000円)にはなりますが、本皮の張り具合を自在に調整できる機能が備えられています。
これにより、1丁の三線で高音から低音まで幅広いねいろを出すことが可能になり、異なる音域のために複数の三線を所有する必要がなくなりました。
3. なとーんどーの背景にある「強化張り」と新垣氏の哲学
「なとーんどー三線」の開発者である新垣喜盛氏は、そのキャリアを通じて三線の耐久性と音質の向上に尽力してきました。
彼の哲学は、三線の使用者のニーズを常に考慮するという深い信念に根ざしています。彼は、より以前に**「強化張り」**という革新的な技術を開発し、三線業界に大きな影響を与えています。
強化張りは、土木用のシートにも用いられる合成繊維製の人工布を胴の木枠(チーガ)に張り付け補強し、その上からニシキヘビの本皮を張り合わせる技術です。
この技術により、本皮の柔らかな音質を維持しつつ、人工皮並みの耐久性を兼ね備えることに成功しました。強化張りは、従来の「本張り」三線が演奏しないと緩んでしまうのに対し、購入時の音質を長く維持できるという利点を提供しています。
新垣氏は、この強化張りの技術について、特許を出願しましたが(防衛的特許出願)、あえて特許を取得しないという選択をしました。
その理由は、特許料を上乗せしたくなかったこと、そして何より、業界全体の発展と三線の普及のためでした。この行動は、彼が単なる職人ではなく、沖縄音楽の文化的健全性に対して広範なコミットメントを持つ先駆者であることを示しています。
4. 公的な評価:沖縄市新商品アワード「最高金賞」受賞
「なとーんどー三線」の革新性は、公的な場でも認められています。
2024年1月13日、「なとーんどー三線」は、第47回沖縄市産業まつり内で開催された**「沖縄市新商品アワード」において最高金賞を受賞**しました。
受賞理由として、その「多様な楽しみ方が可能」「長く使用できる持続可能性」「選択可能で自由なコンセプト」が特に高く評価されました。
この受賞は、新垣氏の技術革新が、現代的な価値観と実用的なニーズの両方に合致していることを証明しています。
まとめ:三線演奏の未来を支える「なとーんどー」
新垣喜盛氏が開発した「なとーんどー三線」は、単なる楽器の改良にとどまらず、三線の普及と発展に大きく貢献しています。
調弦の簡素化や環境耐性の向上、ガタつきの解消といったユーザー中心の機能により、三線との関わりを長期的に、そしてより快適に続けることが可能になりました。
新垣喜盛は現在も精力的に三線せいさくに取り組んでおり、この革新の遺産は将来の世代へと受け継がれていくでしょう。
耐久性、使いやすさ、そして本物の音色を兼ね備えた「なとーんどー三線」は、沖縄音楽の豊かな伝統を未来へと確実に継承させるための極めて重要な存在として、三線界における現代の職人技の象徴となっています。





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